Chapter1-4 プラットフォーマーの衝撃

シリコンバレーはIBMやMicrosoftのような独占企業を壊す風土であったのに、いつの 間にかプラットフォーマーが新たな独占を作り、企業の命運を左右するまでになって しまった。

話は大きく変わって、2020年11月中旬から翌2021年1月までの間、ネットの言論空間では米国大統領選挙についての正当性について、保守とリベラルが言論を戦わせていた。大統領の選出はアメリカ国民が決めるものであり、他国民には選挙権が存在しないものの、世界経済と安全保障および昨今やたらと国連の方で熱心に議論される地球環境への影響が大きいことから、世界中の耳目を集めていたのはご存知の通りである。

 激しい論争の争点、特に保守派の不満の要因となっていたのは、大まかに以下の点に集約されるのではないだろうか。もちろんこれは事実の一面性である事は言うまでもない。

  • 具体的な手法や内容はともかく、他国の干渉を米国大統領選挙が受けており、それを知りながら放
    置した。もしくは利用している集団・組織がいた。
  •  ドミニオン社のシステムで票の集計に改竄があり、それが組織的に行われた。かつ郵便投票の集配
    票の過程で、共和党候補であるトランプへの票が意図的に遺失された。
  •  多様性を重要視するはずの主要メディアが、一方に有利となる情報しか報じず、他方にはネガティブな報道を続けた。CNN/New YorkTimes/Washington Post 対 FOXの様相を呈していた。
  • FacebookやTwitterというSNSに代表されるプラットフォーマーと言われる企業が、トランプや共和党支持者のアカウントを停止したり、投稿に「事実とは確認されていない」等の注釈を投稿者の意図とは関係なく加えたが、その判断基準が一定の主義主張に偏向していた。

現米国政権や民主党支持者からすれば、上記に対しては真っ向から異論を唱えるものであろう。かく言う私も陰謀論には与しない。繰り返すが、米国大統領を選ぶのはアメリカ国民であり、日本人はその結果に伴い、より良い外交を政府に求めるだけである。
しかし、ここで衝撃を受ける事態が起こる。これは単に他国の政治云々に限定される話ではなく、世界中で日常の企業活動に影響を与え得る事だからである。前述のように、主要メディアやSNSによって自らの情報発信を妨げられていると感じたトランプ陣営や保守派は、自らの情報発信プラットフォームの代替手段を新たにParlerというSNSに求め、彼らがいうTwitterやFacebookの検閲を受けない情報発信を開始した。このParlerなる新たなSNSを誰が作ったのかなどは割愛するが、保守派や共和党支持者Exodus(脱出)と称し、Parlerに自身のアカウント作る流れが大きくなっていった。投稿される内容の真偽は玉石混合で分からないが、一月に入った頃、にわかに信じられないことが起こった。

  • AppleやGoogleが、自身の運営するストアからParlerのClient Applicationをダウンロードできないようにしてしまった。
  • ParlerのサービスをホスティングしているAWS(Amazon Web Service)が、Parlerへのサービスを停止すると表明し、実際にネットワークから切り離し、現在もサービスをできなくしてしまった。

ここで恐怖を感じるのは、事業内容や出自はともかく、一応企業としての体をなしているParlerの運営事業が、特定の企業から締め出されてしまい、事業継続ができなくなってしまった事である。SNSを中心とするプラットフォーマーへの憤りは、米国通信品位法230条の悪用であるという疑念、なのに編集権を使い偏向的な検閲をしているというものでしたが、このAWSのケースでは、選挙で選ばれたわけでもない企業が、個人の言論を制限するだけでなく、別の企業の活動を制限・停止に追い込むことができてしまうという、非常に信じがたい事態を目の当たりにしたのです。無償のサービスであるB-to-Cならまだしも、B-to-Bにおいても牙を剥かれたら、どのような結末を迎えるかを想定しておかねばならないのではないか、そんな恐怖心が多方面から出てきてしまったのです。