Chapter1-2 Fry’s Electronicsの破綻

パラダイムシフトが起こる時には、その影響が多方面に出現する。破壊的な技術が古い技術を最終的に駆逐してしまう前に現れるシグナルである。

個人的にショッキングなニュースがあった。電子部品・機器の量販店であるFry’s Electronicsが、36年の歴史を閉じるというものだった。シリコンバレーへ出張した日本人の多くも、このお店を尋ねたことがあるだろうし、私も幾度となく訪れもした。ある意味、シリコンバレーでは象徴的な場所なのである。

シリコンバレーのスタートアップ企業の命はコード、すなわちソフトウェアであり、コモディティ化したハードウェアではない。2000年代に入るとこの傾向は更に強くなり、製品としての完成形をApplianceという形態で提供する会社は、Super MicroやXyratexのハードウェアをよく採用するようになった。

スタートアップの企業が、ビジョンを形にし、開発した製品を世に出す場合には、アプライアンスという形を取ることが非常に多かったのですが、書かれたコードがハードウェア上で効率よく動くのかが試す必要がありました。そこで、開発エンジニアたちは、このFry’s Electronicsに行き、必要とされるハードウェアを調達し、コード自体が効率的に動くのか、加えてどのハードウェアが、どの構成がより効率的なのかを検証したのである。製品をソフトウェアのライセンスという形で提供する企業であっても、Best Practice Guideのような形で、ユーザーに構築時の資料として提供す る必要があり、この試験過程で得られた情報を元にそれは作成されました。これはVCから資金を調達する上においても極めて重要だったのです。この過程で磨き上げられたハードウェア構成が、後にアルファ、ベーター過程を通過し、最終的に正式なリリース製品として、広くその真価を世に問うという流れになるからなのです。Value Propositionはソフトウェアにあるものの、ハードウェアを無視することは出来ないのです。

元NetApp創業メンバーの一人であるThomas Mendoza氏は、LinkedInの投稿の中で、「一つの時代の終わりだ」と 締めくくっていますが、これは多様な、また非常に深い意味を含んで言葉だと感じています。アプライアンス製品とし てオンプレミス向けに製品を売る時代が終わる認識、もうクラウドへの流れを止めることは出来ない時代への覚悟 、CPU CentricからNetwork Centricへの時代を生きた人間が見た終着地の風景に対する感傷、時代の流れのスナップシ ョットとして、このFry’s閉店を見ているのではないだろうか。本当に時代は変わってしまったのだと