Chapter1-1 IT業界における人材の流れ
公開されている情報から何かを読み解くことは、未来学の基本であると考えます 。LinkedInは、就職やデジタルマーケティングのツールだけではなく、技術のトレン ドと企業の栄枯盛衰を現す鏡のようなものである。
私は、SNSの一つであるLinkedInを、よく読み流す。日本では転職ツールとして理解されているらしいLinkedInだが、米国や他の国ではデジタル・マーケティングの重要な媒体という位置づけでもある。しかし、私自身が着目しているのはOpen JobやWebinarの情報ではない。それは「人の流れ」である。
これまで、シリコンバレーを中心とするIT企業でキャリアを積んで来たが、そこでは多くのスマートでチャレンジ精神旺盛な人たちと知り合うことができました。私の財産であり、過去の転職においても、彼らの助言や勧誘から大きな影響を受けたのである。
何故に人の流れを観察しているかというと、人がどの会社からどの会社に移るかを知ることによって、IT業界のトレンドや、Disruptive Technology(破壊的技術、レガシーな技術を置き換える技術)はどこから生まれそうなのかなど、重要な情報を得ることが出来るからなのです。ある一定の規模になった会社に人が移って行くのは、何も珍しいことではありません。当面の安定した企業人生活を約束されるのですから、それは当然と言えます。でも、居心地の良い環境を捨てて、新しいチャレンジを求めて他の会社へ移るというのは、それ相応のベンチマークをしなければなりません。彼らは非常にスマートであり、かつハードワーカーです。生き馬の目を抜く彼らは、このDisruptive Technologyを見抜く力と、それがどう広がって行くかを可視化できるイマジネーションを備えていると思います。彼らを観察していると、従来型の大きな組織を抱える企業に移るのは、それ相応のポジションを与えられるなどの理由がない限り、極めて少数であることが判ります。私がかつて働いた会社で、プロダクト・マネージメントの1マネージャーに過ぎなかった人間が、HPEのある事業部門のトップに招聘されたのはよい例でしょう。
ここ約5年位の人の流れを見ていた気づきとして、顕著になってきたことが幾つかあります。オンプレミスへのアプライアンスモデルやソフトウェアのライセンス販売をビジネスの主戦場とする会社への転身は極めて少ないこと、彼らの多くがクラウド、SaaSないしコンテナに関わるスタートアップやその管理を担うソリューション企業、もしくはBIやAI関連企業(多くの場合SaaSという形態を取っている)への移動が多いこと、これらを除けばセキュリティ関連企への転身が多いことである。これらは、何らかの相関関係があるに違いないと想像しています。ここを営業という観点で見て行くことは、自身にとっても考えるヒントとして価値があることと考えています。
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