Chapter1-6 ITプラットフォームビジネスの暗雲

アマゾンという名のオンライン書店が、気がつくと社会インフラのような存在になっ ていた。B-to-Cのビジネスを爆飲する彼らは、B-to-Bにどう影響を及ぼしていくのだ ろう。

自動車産業の裾野は広い。日本の全就業人口6,724万人のうち、542万人が自動車関連就業人口であり、実に全就業人口の8.1%に相当する。トヨタが風邪をひけば日本経済がクシャミをするのは当然である。テスラに代表される電気自動車が普及すれば、広い裾野の自動車関連業界は大幅な縮小を強いられる。ましてやSDGsよろしく脱炭素社会を実現しようと、国際社会は動いている。日本がバブル経済に踊っていた頃、トヨタとそのグループ企業群は浮かれることなく物作りに励んでいた。この日本を象徴する企業はきっと将来を見据えた手を打っていると信じたい。
 専門家でない私にも分かることは、電気自動車と現在の内燃機関を搭載した自動車で比較した場合、その完成車に要する部品数の桁が違うということだろう。極論を言えば、電気自動車は、フレーム(プラットフォーム)にタイヤ、ハンドル、ブレーキ、モーター、電池、そして自動車用のOSを載せればいいのである。パソコンの組成に例えられる所以は、OS以外はコモディティ化出来てしまうところある。その結果として、自動車産業に携わる部品提供企業群は、現在より大幅に少なくなっているはずである。だからGoogleやAppleにとって、電気自動車というのは極めて親和性が高い。

写真:2016年シリコンバレーのパロアルトにて、筆者運転車の横に停車したGoogleの無人運転テスト車

一方、私の身近なIT業界はどうなのか。総務省の統計によれば、実に5,474社がIT関連企業としてカウントされている。これらの多くが何らかのプラットフォームを利用し、アプリケーションを開発し、サービスを提供して利益をあげているわけである。そして、プラートフォームを開発し、あるいは輸入し、それを販売・サポートするビジネスは、過去IT業界の一定部分を占めてきた。IT業界においては、B-to-B-to-Cの左端のBに該当するわけだが、前述のようなプラットフォーマーの影響をどう受けるのだろうか。いやすでに大きく受けている(支配されている)が、今後のビジネス戦略を間違えると存続自体が危ういのではないかと個人的に危惧しているのである。このB-to-B-to-Cの左端の立場に立って物事を見つめることは、この領域でビジネスをする者として極めて重要である。

 私が大学を卒業する頃、学生が就職をするならば、CMによく出てくる会社、財閥系の冠がついた会社、親方日の丸な会社に入社が決まると、「これで定年を迎えるまで大丈夫」なんて言われたものである。要は食いっぱぐれがないということである。今の時代にそんな話は通用しない。どの業種・会社であっても、生き残りをかけて先を見通す力が求められる。技術革新が最も激しいカテゴリーに入るIT業界であればなおさらである。舵取りを過てと、会社の存続に直結する。もしITに関わる企業の経営者であればどうするだろうか、その判断となる指針を未来学の真似事として、自身のビジネスの方向を示す物差しとして、考察をして見たいと思います。